(前回までのあらすじ)  四国天王がついに本州に上陸した!  でも元からあんまり協調性が無いんだ!  この隙をついて各個撃破が得策だぞ!  戦え! チュウレンジャー!! 第15話 「決着! 仁義無きしまなみの戦い!!」 「――坊、もう満足したか?」  にんまりと笑いながら広島が言う。  取り上げた棍でトントンと自分の肩を叩く様が、ことさら余裕を示しているようだ。  しかしその言葉に愛媛は悔しがるでもなく、微笑を浮かべたままである。 「はいはい、降参です。そろそろ返してつかあさい」 「なんじゃあ、つまらんのう」  今の今まで激しい打ち合いを繰り広げていたとは思えぬ、のんびりとした応酬だ。  よくよく見れば双方ともに傷の一つも負っていない。 「しっかし、気に喰わんことでもあったんか」  ――トン、と最後に肩を一つ叩いた棍を、くるりと振って広島が言う。  愛媛の鼻先にその先端を突きつけて、問いを重ねる広島の声音はわずかに低い。 「四国連中と一緒に暴れまわるなんぞ、坊らしゅうもない」 「いえ……別に、なんもありません」  穏やかな表情を保ったまま、愛媛は己に向けられた棍を取る。  広島はあっさりと手を離した。 「ま、それならええんじゃ。――わやぁすなよ。怪我でもしたら大事じゃけぇ」  棍を離した手がそのまま、愛媛の頭にぽんと置かれる。  さすがの愛媛も驚き、わずかに目を見張った。  広島はその様子に笑ってから、大きな手でわしわしと愛媛の頭を撫でる。  髪の毛をくしゃくしゃにされながら、愛媛は困惑したように言った。 「……本当に、貴方という人は。少しは怒ってもえぇんですよ」 「ま、ワシが勝ったしのぅ。それに誤解されとるんか知らんが、ワシは平和主義じゃ」  飄々と言い放つ広島に、愛媛は一瞬唖然として、それからすぐに吹き出した。  この強面の男が大きな手でちまちまとパンくずを作っては、鳩にやっている様子を思い出したのだ。 「ああもう……完敗、です」  そう宣言する愛媛の胸中に、もう鬱屈としたものは無かった。  くすくすと笑いながら愛媛は腕を伸ばして、広島の頭を引き寄せる。  普段決して口にしてやらない言葉を、言ってやっても良いような気持ちになったからだ。  貴方が最近中国の皆さんとばっかり仲良うしてるから、ちいとだけ、怒っとったんですよ。  ――まあ、確かに今は負けましたけど……“夜”は覚悟してつかあさいね。  耳元に囁かれた言葉に、見かけによらず初心な広島が真っ赤になった。 「こ、この……坊っ!!」 「ああ、久しぶりに安芸の紅葉が見たくなりました。もちろん泊めてもらえますよね――?」  にっこりと笑う愛媛の表情は、仕返しに成功した子供のように、実に晴れ晴れとしたものだった。 次回、第16話!! 「絡まる思い! お前と俺と時々うどん!!」 お楽しみに! ----------------------------------------------------------------------------------------- 攻愛媛が見たくてやった 反省はしていない